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佐賀県伊万里市のやさしい歯医者さん浦上歯科医院です【公式】ページ

9)「歯の再植をやっていて気がついたこと」

③歯の再植を成功させるには準備が必要です。
歯を抜いた穴に歯を戻した時、骨とくっつく細胞をあらかじめ
増やしておく必要があります。

その細胞の名前は 歯根膜 といいます。
膜と名前がついていますが、靭帯繊維です。

歯はこの歯根膜を介して、アゴの骨とくっついています。
抜歯した時、この歯根膜が歯根に残っていないと骨とくっつかず、再植は失敗します。
この歯根膜の量が多ければ多いほどうまくゆきます。
歯槽膿漏末期でブラブラしている歯根には、
ほとんど歯根膜は残っていません。
ですから、再植してもうまくいかないことがほとんどです。
まれに、骨と癒着して、しっかりくっつくこともありますが、ねらってできることではないです。
不確実なので今は、やらなくなりました。
再植や移植を成功させるためには歯根膜の量を増やさないといけません。
そのために エクストルージョン を行います。
歯根にゴムを使って引っ張り上げると歯根膜繊維は伸びてきます。

こうやって、歯を引っぱり出すことを、エクストルージョンと言います。
週に1回くらいゴムを交換して、歯がグラグラになるまで引っ張ります。
早くて1週間、長い時は2~3ヶ月も引っ張ることがあります。
時間がかかっても、よーく引っ張ってグラグラにしておかないと 抜歯する時に歯にヒビが入ったり、大切な歯根膜がはがれたりしてしまって再植、移植の失敗の原因になります。
エクストルージョンして、グラグラになった歯を抜歯して、骨の奥深くに残っている病巣を取り除きます。
この病巣は骨にへばりついていて、なかなか取り除くのが大変です。
歯石を取る器械を使って、病巣のへばりついた繊維をほぐしたり、ふやけさせたり、軟かくして取り除きます。
病巣が大きく深い場合は取り残しがあると思われます。
この取り残しがわずかならば、決定的な失敗につながることは少ないと思いますが、でも、1回だけこの取り残しで失敗しました。
右下の小臼歯で病巣が大きく、下顎の神経、血管にまで達していたため、恐くてほとんど取りきれませんでした。半分くらいは、取り残したかも知れません。術前にそのことは患者さんに説明していました。
その状態で再植したところ、腫れて痛んで、おさまった後、骨とはくっついていませんでした。

今ならこういうケースでどうするか?
今なら、はじめからやりません。無理だと思います。
1つだけ考えがありますが、リスクが大きすぎます。
やめておいた方が良いと思います。

病巣の取り残しの影響は上顎では少なく、下顎で大きいと思われます。

骨の質が違うからです。
上顎の骨は、穴がたくさんあいています。
その穴から炎症時の体液の圧力が逃げることができます。
下顎の骨は穴が小さく緻密です。又、まわりを硬い皮質骨に囲まれています。
だから病巣の取り残しが原因で炎症が起きると、

その圧力は逃げ場を失い一番弱い所、つまり抜歯した穴と歯との
隙間から出てゆき歯根全体に炎症が広がり骨とくっつかなくなると思われます。

抜歯した歯根の根尖には汚物がたくさんしみ込んでいます。
これを見ると「あー、あんなに一生懸命に治療したんだけど、これじゃあ治るはずないねぇ~。」と思います。
これがエンドの限界って感じです。
だって、直接見ることができない所なんですから。
この汚染物質を除去して接着材で塞ぎ、穴に戻して、固定したら終わりです。
3週間~1ヶ月でくっつきます。
私は再植を400本くらいはやっていますが、それを通じて見えて来たのが

感染根管治療の限界です。
次回は、このことについて書いてみたいと思います。


浅学歯いしゃの役にたつかどうかわからない話